ジョナサン・ル・ネール選手、驚愕のバイシクルキックで「People’s Pusukas賞」受賞
Frederik Hvillum (translated by Ai Farkas)

フランスのジョナサン・ル・ネル選手が、アクロバティックなオーバーヘッドキックによって今年のPeople's Puskas賞を受賞し、年間最優秀グラスルーツゴールの栄冠に輝きました。
「味方がパスを出せる体勢に入ったのを見た瞬間、僕はボックス内に走り込むと決めました。パスは少し後ろに来たので、その瞬間に僕に残された唯一の選択肢は、このちょっとクレイジーなアクロバティックな動きしかありませんでした。」
ル・ネル選手は、自身のゴールの流れをそう語ります。このゴールが世界中に広まり、接戦の末に今年のPeople's Puskas賞を獲得し、一躍注目の的となりました。
今年のキャンペーンには、Veoコミュニティから2,000以上のゴールが投稿されました。そこから100本に絞り込まれ、最も多くの票を集めた8本がVeoの公式Instagramチャンネルで行われたノックアウトステージへと進出しました。決勝戦では、35歳のデパート従業員ル・ネル選手と、エトワール・スポルティブ・トルイ所属の24歳ティボー・ルビエ選手によるフランス対決が実現しました。
両者ともにSNSで印象的なキャンペーンを展開し、自らのネットワークを駆使しました。ル・ネル選手は、かつて在籍していたリーグ・アンのアンジェのアカデミー時代のつながりで、クラブが17万人のフォロワーに向けてコンテストをシェア。一方ルビエ選手は、元マルセイユおよびアストン・ヴィラ所属で、現在はニースでプレーするモルガン・サンソン選手をはじめ、チームメイトのサンタマリア・バティスト選手、フランス代表のシャルロット・ビルボー選手、多くのインフルエンサーを巻き込みました。
24時間にわたる投票と12,000票以上が集まった中、最終的にはわずか88票差でル・ネル選手が勝利を収めました。両者のゴールはいずれもフランスのアマチュアリーグ、リージョナル2の試合で生まれたものでした。
「自分のゴールがSNSで広がって以来、信じられないほどたくさんの応援メッセージをいただいています。まるで夢のようです。ラジオやテレビ、新聞などメディアからの問い合わせも相次ぎ、たくさんの方々に直接祝福の言葉をかけてもらいました。このゴールは世界中に届き、今でもメッセージが届き、シェアされ続けています。まさかこんな規模になるとは思っていませんでした。とても光栄です。」
そう語るル・ネル選手は、受賞発表以降、国内外のメディア対応に大忙しの日々を送っています。
本能のままに——そして世界が注目する存在へ
Veoの録画を見返すと、あのゴールの瞬間がよみがえってきます。ネットを揺らした直後、ル・ネールは静かに拳を握りしめ、タッチラインに向かって駆け出しました。その背中を追いかけるように、仲間たちが歓喜に包まれながら駆け寄っていく——けれど、意外にもゴールを決めた本人は、控えめにこう語っています。
「正直、自分でも何が起きたのか、始めはよく分かってなかったんです。」
「ボールを蹴った瞬間、自分でも“うまく当たった”と感じました。しっかりと力も乗せられた。けれどその後、地面に倒れ込んで、気づいたらボールはゴールに入っていたんです。
そのときは、何が起きたのか本当に分かりませんでした。
仲間たちが駆け寄ってきて祝福してくれて、みんなが驚いているのを見て、ようやく“自分はとんでもないことをやったんじゃないか”と思い始めたんです。」
このゴールについて、かつてマンチェスター・ユナイテッドで指導経験を持つマイク・フィーラン氏とそのコーチングチームも分析を行っています。彼らは決勝に進出した8チームを徹底的にリサーチし、ル・ネール選手のゴールを次のように評価しました:
「右ウィンガーがワンタッチでゴールエリアにボールを送ると、ストライカーは3バックの右センターバックの“死角”にうまくポジションを取っていた。そこからはまだ難しい場面でしたが、素晴らしい身体の使い方と完璧なミートでシュートを放ち、キーパーには一切チャンスを与えませんでした。
わずか6本のパスでキーパーからゴールまで…。プレーの切り替え、ライン外からの動き出し、ワンタッチのクロス、ワンタッチのフィニッシュ。どれをとっても“完璧なチームゴール”と呼ぶにふさわしいものでした。
このゴールはル・ネール選手の驚異的な一撃で締めくくられましたが、それを生み出したのは、卓越したチームプレーです。」
自然体が生んだ歓喜の瞬間
ゴールのあとには、祝福の嵐と大きな注目が続きました。とはいえ、ル・ネール氏が急に別格の選手としてプレーし始める、というわけではないでしょう。ただし「People's Puskas 」受賞者となった今、その名前には確かなインパクトを持っています。アマチュアカテゴリーであるリージョナル2の舞台でも、相手チームに少なからず“警戒心”を抱かせる存在となったのは間違いありません。

「まずは、自分のことを誇りに思います。そしてもちろん、クラブであるアヴニール・スポール・サン=ピエール・モントルヴォーの代表としても、嬉しい気持ちでいっぱいです。
ただ、このゴールが決まったからといって、自分自身や自信が大きく変わることはありません。でも、対戦相手にとっては、ちょっとした脅威にはなるかもしれませんね。」
People's Puskas 2024を受賞したル・ネール選手のアクロバティックな一撃は、サッカーというスポーツが持つ「ひらめき」と「瞬発力」の魅力をあらためて思い出させてくれました。
あのゴールは、時間をかけてトレーニングをした成果だったのか?と問われると、ル・ネール選手の答えは、意外にもあっさりしています。
「特に計画していたわけじゃないんです。あの瞬間、“これが一番いい選択だ”って直感的に感じたから、自然と体が動いただけでした。」
他の選手たちに送るアドバイスについて聞かれると、ル・ネールの答えはとてもシンプルです。
「アドバイスがあるとすれば、それは“楽しむこと”です。サッカーはあくまでゲームですから。楽しさと自信さえあれば、どんな場面でも、どんな動きにも挑戦できます。」
あのゴールを超えるようなプレーを、今後また見せてくれるのか、という問いに対して、
彼は少し笑いながら、こう締めくくりました。
「正直なところ、あのゴール以上のものを今後決められるかって言われると、自信はありません。でも、もしまたPeople’s Puskasに選ばれるような場面があるなら...30メートルのボレーを、そのままゴールの上隅に突き刺してみたいですね。」
本能で動き、心から楽しむ。それがル・ネールのサッカーであり、彼自身そのものなのです。